米粒遊歩 〜自由と孤独と本と手帳〜

旅の手記、読書の記録、時々手帳。主人公ツバメが小説風に展開します。

【旅時記・奈良#1】鬼の峠を越え、山羊の庭でスリランカのドライカレーを食べる

本ブログは小説風に展開しております。

 鬼の名が付くその地を目指してひたすら坂を登り、峠を超えると、ようやく小さな集落が見えてきた。

とあるWEB小説を読んで『奈良』という土地に興味を持った僕は、こうしてこの四方八方を山に囲まれた秘境とも言える地に遥々やってきた。大阪から、歩いて、山を越えて

 

 多くの観光客は近鉄電車に乗って、西の大阪難波から一直線に、もしくは北の京都からやってきて、大和西大寺駅で乗り換えて近鉄奈良駅を目指すのだろう。そうして東大寺や興福寺、奈良公園、奈良町あたりを巡り、JRで法隆寺方面へ足を延ばしたり、といったところだろうか。

 それを少し趣向を変えて、古く大阪から奈良へと続く道であった『暗越奈良街道』を通って西から東へと参ってみようかと、低くも急斜面が険しい生駒山(標高642m)を越えてきたのだ。

 

「坂が急すぎる……」

 息を切らしてガードレールに手を付き、一息入れる。大阪側の景色とまた違い、のどかな雰囲気だ。風が気持いい。

 

 暗峠を越え、少し東へ下ったところが、『その昔、修験道の開祖である役小角が人の子を攫って恐れられていた鬼たちを改心させた』という伝説が残る鬼取町だ。いくつか一息つける店がある中で、広々と開放的な野外レストラン【ラッキーガーデン】へ足を踏み入れた。

ラッキーガーデンの看板と植栽

アメリカフヨウとバナナの樹

 駐車場の入り口に大きなアメリカフヨウと バナナの樹が植栽されている。

 

 一山越えた先にある、素朴で見晴らしの良い場所だ。

 ラッキーガーデンはカレーをメインにしたスリランカ料理のレストランで、桜・羊と二つのエリアに分かれている。

ラッキーガーデンの植栽

 春になると桜が満開になり、木陰が気持ちよく田園風景の見晴らし抜群の桜エリアは、季節のコース料理を予約して楽しむ空間。

ラッキーガーデン桜エリアの庭と外の席

 桜エリアの入り口付近の庭を少し覗いてから、当日ふらっとやってきて自由席で寛げる羊エリアを散策する。かつては羊が居たものの、二年ほど前に寿命で亡くなってしまったそうだ。残念だけど、尽きる命もまた尊し。

池とゴーヤ

 敷地内には様々な植物が植わっていて、ゴーヤもさり気なく栽培されていた。

方角案内の手作り矢印看板

 スリランカの方角もバッチリ示してくれている。

「スリランカまで7000km。日本列島が約3000km、万里の長城が約6300km。遠いようでいて、近いようにも思える距離かも」

 奥に見えるのはドッグランで、一緒にやってきた犬と一緒に席に着いたり、囲いの中で走らせてあげられるのも一つの特色らしい。

青いドアのお手洗い

 青いドアはトイレの入口。これはわかりやすい。

 小屋型の個室(時間制・90分)も用意されているので、こじんまりとした隠れ家のような雰囲気を楽しむこともできる。

木陰に建てられた個室の小屋

「この小屋の形、妙に可愛いな」

 ドアの横にランプが吊るされていたりと、中々オシャレだ。

ラッキーガーデンの外れにあるギャラリーショップ

 敷地の外れに、ギャラリーショップという名の森の小屋 もあった。

 

 

 歩き疲れて腹ペコだったので、僕は早速ドライカレーを注文した。

 これは敷地内に植わっているバナナの葉が採れる夏シーズンだけのメニューなのだ。

ドライカレーとお惣菜とサラダが山盛りに乗ったプレート

「かなりのボリューム! 食べきれるかな?」

 

 ドライカレーの周りには、パイナップル入りの甘酸っぱいスパイスピクルス、酸味の効いたアンブルナスのおかず、スパイスで炒めたココナッツサンボル豚ミンチがぐるりと添えられている。

 何より無農薬野菜のサラダにトマトやキュウリといった季節の生野菜が添えられているのも、特にこの季節には嬉しい。トマトの横にちょこんと添えられているのはミントソース。ドライカレーの上にはゆで卵チキンサテー

 

 なんとも豪勢なプレート!

 

 ……あ、ちょっとテンション上がりすぎたけれど、早速いただきます。

ドライカレーやサラダ、お惣菜が山盛りに乗ったプレートとアイスコーヒー

 ドリンクは氷もコーヒーで作られているという水出しアイスコーヒーを。最後までアイスコーヒーが薄まらず美味しくいただけるはず♬ 

 

 色んなおかずとライスをよく混ぜて混ぜて、個の味、組み合わせ、そして変化を楽しむのがスリランカの食のスタイルということで、試してみると本当に味変を無限に楽しめる。

「スパイス辛さというより、ホントに色んな味がして、無限に味変を楽しめそう

 ほんの少し青唐辛子を効かせた(とはいえ、そんなに辛くない)、ふわっと爽やかなミントソースがまた良くて、どんどん箸が進む。って、スプーンだけど……

 フルーツとヨーグルトも口直しにピッタリだ。

 

 褒めちぎってはみたものの、一つだけ言うことがあるなら……

「量、多いな!」

 

 ここまで登ってきて腹ペコだったから完食できたけれど、メインのドライカレーが中々のボリュームだった。おかずと混ぜて混ぜて〜と食べていくと、最後ドライカレーのライスだけが少し余ってしまった。

 でも、それを乗り越えて「また食べたい!」と心から思える大満足を得たのは確か。

「水出しアイスコーヒーもドライカレープレートに合ってたし、これはオススメの組み合わせかもしれないな」

 

 ちょっと珍しいなあと思ったのは、サラダにかかっていたマスタードベースのドレッシングで、置いてあるのをお好みで自由に追加できるのが嬉しい。

 サラダ以外にも、例えばチキンサンドとか、別のお料理にも使えそうだ。

 

 

 ラッキーガーデンのシェフは皆スリランカ人。彼らがスパイスを独自に調合して創ったオリジナルのドレッシングらしい。

 丁度、「シェフにじゃんけんで勝ったらドレッシング1本プレゼント、負けたらお買い上げ(540円)いただきま〜す」というじゃんけんチャレンジというイベントをやっていて、なんとなく雰囲気に流されてチャレンジをすることになった。

 

スリランカにはじゃんけんの文化が無いそうで、シェフたちも練習しながら……」という日本人スタッフさんの文言を鵜呑みにしたきらいもある。「最初はグー」だとややこしいらしく、スタッフさんの「ジャンケンポン、ジャンケンポン」の音頭でシェフと対決する。

 あいこが続き繰り返される「ジャンケンポン」の末、なんと! 普段あまり出さないチョキで勝利!

 

【ツバメはドレッシングを手に入れた】

野外のテーブルに置いたラッキーガーデンのマスタードドレッシング

(眺めの良い桜エリアの外のお席で撮影させてもらいました。ありがとうございます)

 

 桜エリア・羊エリア共に、各テーブルに季節の花が生けられていたり、色んな植物が植わっていたりして、席に着いても、腹ごなしにエリア内を散策がてら散歩しても楽しい場所だ。

小さな瓶に生けられたお花

 

 さて、こうして件の小説の聖地を巡る奈良旅を始めたわけだけれど、作中では特定の店の名前などは登場しない。こうして僕が巡る場所は、ただの推測に過ぎない。

 なにせ小説の中のことは、全て虚構なのだ。

 

 あの鬼と山羊が織りなすエピソードは、きっと……

(注:この記事の公開時点では、まだ小説の該当エピソードは公開されておりません。『時間の倒錯』の表現でもありますので、小説も併せてご覧下さる方は時間軸の交錯も含めてお楽しみ下さい)

 

 

 

 実際にラッキーガーデンでは山羊が飼育されていて、昼間は敷地内に繋がれ、草をのんびりと食んでいたりする。

草を夢中で食む二頭の黒山羊 

 強そうな角と立派な髭を蓄えた雄山羊も居る。

草を食む雌の山羊と大きな角と立派な髭をを持つ雄の山羊

 山羊は頭突きをしてくることもあるから、むやみに触りに行ったりしちゃ駄目だろうけれど、飽きもせず、しきりに草をむしる山羊たちは見ていて飽きない。

 

 山羊はウシ科の動物で、ずーっと草を食べている。反芻もする。落ち葉が好きらしく、桜の樹の下に落ちている黄色い葉っぱを熱心に拾い食いする。引きちぎるように草を食む。しかも穂先の柔らかく美味しそうなところだけ。よもぎやクローバーも好きみたいだ。

 

 確か山羊には穀類をあげちゃ駄目なんだっけ。

 米やパン、あと芋や豆も、いくらでも食べちゃうけれど、消化の際に腸内で発生する酸の処理が追いつかずに発酵して死んじゃったりするから、山羊にとっては毒らしい。

(ラッキーガーデンはあくまでレストラン。動物触れ合いコーナーは無く、離れて温かく見守るだけ)

 

黒い仔山羊

 仔山羊の手元もチョキだ。
 「この子も大きくなったら、立派な角と髭の山羊に成長するのかな。また時間を置いて成長を見に来たい」

 

 食べるから喜んでる、だからあげたいって、思っちゃうのは人間の勝手な思い込みだろう。

「紙もあげちゃ駄目なんだっけ。現代の紙はインクだったり、化学薬品が付いているから、食べたとしても消化不良を起こすとか」

 

 医食同源という考え方もあるわけだから、人も山羊も食べるものには気をつけたい。互いに再会するためには、長生きしてもらわないと。

 

 

 そういえば、BBCニュースの記事で「山羊は幸せな人間に引き寄せられる」という研究が紹介されていた。怒った顔と笑顔の写真を用意すると、怒った顔を視認した上で、笑顔の方へ真っ直ぐと歩み寄っていくのだそうだ。

 犬や馬のように長く人間と共に暮らしてきた動物だけでなく、山羊もまた感情把握・理解能力に長けているのかもしれない。

 

 確かに……山羊はよく『見ている』かも……

だいぶ熟年っぽい大きな白山羊。

「なんかいい顔するなぁ。教えて〜、おじいさん〜。好きな食べ物はなんですか?」

『キュウリじゃよ』

 と、アテレコして遊んでみたりして。

 

 

 ラッキーガーデンは大阪と奈良を分かつ生駒山の東斜面にあって、近くの田園風景、眼下の南生駒の町並み、向かいの山の遠景と眺めが凄く良い。開放的な空間で、風も良く抜けて気持ちいい。 

ラッキーガーデンの桜エリアから見える田園風景と山の遠景

 桜エリアの席で、コース料理も楽しんでみたいなあと思いつつ、ぐるりと散策して、喉が乾いたので、最後にシーズンメニューの青紫蘇ソーダを注文する。

ライムを添えたピンク色が可愛らしい青紫蘇ソーダ 

 ピンク色の可愛らしいドリンクは、添えられたライムとの相乗効果で、見た目の口当たりもとても爽やかだった。おかげで生き返った。

 

   *

 

 さて、WEB小説の中に登場する現実をモデルにした虚構と、今、自分がいる現実

 この二つの世界を繋ぐのはインターネットという目に見えない糸だ。

 

 僕はこうして実際の奈良を歩き、旅時記を野帳に記す

 これをインターネット上に公開することで、自分もまた見えない糸の紡ぎ手になる。そうすることでいつか、古都奈良と存在自体があやふやな異都奈良が繋がり、次第に現実と虚構が重なり合う日が来るんじゃないだろうか。

 

 僕も一介の書き手として、そういった空想を巡らせながら、今日もまた、旅を手帳に記しておこう。

 

【この記事に登場したグルメSPOT】

森のレストラン ラッキーガーデン スリランカ料理のお店

 

 

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