米粒遊歩 〜自由と孤独と本と手帳〜

旅のあれこれを手帳に書き残すように。

本の装丁に視る世界観

図書館に足を踏み入れてすぐの『おすすめ本コーナー』。

たいていチラチラ横目に見つつで、たまに立ち止まる。その流れで『世界のスープ図鑑:独自の組み合わせが楽しいご当地レシピ317』を借りたことがある。

別に空腹だったわけではない。けれど、なんというか、こう……光って見えたのだ。

 

図書館の顔とも言えそうなこのコーナでは、テーマ設定やそれに付随する選書、そして展示の仕方で、担当した方の本への思い入れが感じられることが多い。

 

タイムマシン・ブルース

今回ぐっと惹きつけられ、即断・ジャケ借りしたのは、畑野智美先生の『ふたつの星とタイムマシン』だ。その本を中心に〈タイムマシン〉を題材にした本が曼荼羅のように広がっていて、H. G. ウェルズの『タイムマシン』だって当然のような顔をして其処にいた

 

ほほう、なんでまた? と思いきや、これまた目を惹くポスターが近くに貼ってある。

なんでも9月30日から劇場上映が始まった、森見登美彦先生の『四畳半タイムマシンブルース』に因んでいるらしい。なんともタイムリー。流石である。

 

それこそタイムマシンではないものの、私自身も『時空間』を扱ったSF小説を書こうとしている。その表現方法やテーマを練り練りしながら、試しに短編を公開したり、改稿したりを織り交ぜつつ苦心している真っ只中なのだ。

そんなわけで、閉館時刻が刻一刻と迫る中、掻き立てられるようにしてその本を借りた。

何気なく目についた一冊が、その界隈の、ちょっとした小宇宙の入り口のように感じられて、なんとも不思議な心地がしたものだ。

 

SFは夢想のファンタジスタか

ところで、創作上の物語はSFだろうがファンタジーだろうが、基本はどれも〈作り話〉だ。

色んな考え方があるだろうけれど、あり得ないけれどあったとして世界を広げてゆくのがファンタジー、そのうち一見あり得ないけれど実現可能かどうかの議論の対象になり得るのがSF(サイエンス・フィクション)なのかな、と最近は思っている。

 

とはいえ、かつて『マトリックス』で予言されたように、人類がメタバース世界にログインして時を過ごす時代が台頭しつつある。つまり空想だった世界と現実の境界が胡乱になり、リアルに複数の世界が融合してゆきそうな気配すら漂い始めているのだ。

 

いずれにせよ、〈人の想像力が新たな世界を創造する〉ということだ。

 

……この話はただの余談だから、話を戻そう。

 

本の装丁が生み出す出会い

視界の端にでも引っ掛かろうものなら、それは相手が人であろうとモノであろうと、なんらかの形で興味を唆られているに決まっている。

少なからず装丁への興味が手に取るキッカケとなった本たち

装丁が素晴らしいと、本がアピールしてくるし、中身までも色鮮やかにくっきりと引き立つ。何度読み返そうが、長らく積読を築いていようが、手元に置いておきたくなるものだ。

 

では例の『ふたつの星とタイムマシン』の装丁について、ストレートに記述してみる

鉛筆もしくは細いペン先の線画のようなグレースケールの装画に、金の箔押しのタイトルと著者名、出版社名。色味を抑えに抑えたその画は全体的に控えめでシンプルな印象ながら、線の細かさ描かれる構造物の複雑さにその世界の奥深さを感じた。

背表紙は逆に、タイトルと著書名が金の箔抜きになっているのもまた良い。

 

装画デザインは、スチームパンク風の機械仕掛けの構造物に、奇妙な形の空飛ぶ船や自転車みたいに見える時空を駆ける乗り物。四角いビルは深い森に飲み込まれつつあって、巨大な機械仕掛けにはブロッコリーみたいな樹が生えている。

過去にはきっとこのような景色は無かった。とすれば未来想像図か。

そう考えるとワクワクする。これだからSFは堪らない。

 

そうしてぱらりとめくると、目次ページの裏側に見覚えのある名前を見つけた。

  • 装画:西野亮廣
  • 装丁:名久井直子

そっか、『えんとつ町のプペル』の著者、西野さんの絵だったのか、と納得。そしてこの世界観にも合点がいった。何とも味のある絵だ。

ちなみに借りたこの本に付された図書館のおすすめコメントにも、『テーマ「味」』と書いてあって、どうにもこうにもシンパシーを感じずにはいられない。

 

この本は味があって、奇妙な機械仕掛けと自然の逞しさが融合してくるような世界観が詰まっているに違いないのだ。

 

本の幻影

さて、「そろそろソイツの顔を見せろ」とでも言いたくなる頃合いだろうか。

ごもっとも。ビジュアルの話なんだから、絵的なものを見せろと。

いつもなら『版元ドットコム』の書影を利用させてもらうのだけれど、この作品に関しては書影の下に「この書影の使用については、出版社にご相談ください。」と表示されていて、出版社の指示に従う必要がある。

そりゃあ、そうだろう。装丁や装画にだって著作権がある。


Amazonリンクの画を貼ることもできるけれど、
今回はあえて控えることにして、言葉による描写に努めた。一応は物書きの端くれでいるつもりなのだから、〈言葉〉のみで一体どれほど伝えられるかと精進せねばなるまいし。

 

ちなみに『ふたつの星とタイムマシン』の金箔カラーリングは単行本だけのようで、文庫本では文字が青い。それはそれで青春感があって好きだ。

 

この本の装丁が気になったら、図書館や本屋を散歩したり、検索したり、この記事の作品名のリンクからAmazonの商品ページに飛べばいい。

(このブログはアフェリエイトプログラムに参加しているけれど、リンクを踏んだところで私には1円も入らない。リンクを通じて買い物すればそれは発生するけれど、誰が何を買ったかなんて、私は知る良しもないのでご安心を)

いずれにせよ、装画は表表紙だけでなく、背表紙、裏表紙と一続きの絵になっているので、実物を手に取って、あらゆる角度で眺められる方法をおすすめする。

2014年出版だから、図書館の方が見つかりやすいかな。

 

↓まだ読み始めだけど、

今週のお題「最近おもしろかった本」