米粒遊歩 Tiny Journey

米粒による旅の手記、読書の記録、時々手帳。小説執筆のこと。

琥珀が視た夢・弐 秘められたエネルギー

みなさま、こんにちは。

 

こちらの記事では 『琥珀が視た夢・壱』では琥珀という化石の形成と見た目の特徴、主にに注目した話を書きました。

今日はこの続きを。

 

今回は琥珀の特徴を掘り下げしつつ『琥珀』から人はどんなものを連想しているかという話に広げていきます。

 

琥珀が秘めるエネルギー

人にしろ物にしろ、物質はエネルギーを秘めています。

太陽のエネルギーを受けて育つ植物に由来する『琥珀』には不思議な魅力が秘められています。 

切り株に開いた穴から芽を出す新芽

 

燃焼

琥珀は植物樹脂に由来するのでよく燃えます

いわゆる化石燃料みたいなもの。石油などと同じく燃料に成り得る物質です。ですが現代人の生活を支える程の産出量はないでしょうし、宝石や研究材料として価値がある分、勿体ない。

今となっては琥珀を燃料扱いするなんてことは中々出来るものではありませんが、かつては海辺で琥珀が挟まったままの流木を拾って活用されたことでしょう。よく燃えることから、好まれただろうと容易に想像できます。

 

琥珀の産出量の多いバルト海沿岸諸国では、出産や結婚のお祝いとして、琥珀の粉を火にくべるという風習が今も残っているようです。

かつてドイツでは、英語圏のユダヤ系の姓でもある"Bernstein"(燃ゆる石)と呼ばれ、転じて琥珀を"Burning Stone"と呼ぶこともあったそう。

 

太陽のような色合いと燃えやすい性質から『太陽の石』とも呼ばれた琥珀。そういったエピソードも含め、今後の創作にも活かしていきたい興味深い化学特性です。

 

静電気

東欧からヨーロッパに琥珀が 持ち込まれた当時は、同じ目方の金と琥珀を等価交換していたとか。なんでも「北方の金」と呼ばれていたそうです。

そう考えると、時を越えて金に相当する価値在るものを生み出した植物は錬金術師じゃないの? ならば、錬金術師って先見の明でビジネスを始める人の事じゃないの? なんて考えたりしますが、話が逸れていきそうなので戻します。

 

かつては"太陽光のように輝かしいもの"という意味合いで、ギリシャ人にはを"エレクトロン"と呼ばれていた黄色い琥珀。当時、貨幣の素材として"エレクトラム"という合金に因んだ呼び名だったそう。"エレクトラム"とは金20%と銀80%の合金のこと。

 

毛皮などで琥珀を擦ると、糸くずや羽毛を引き寄せる。これに気付いたのがギリシャの科学者タレスで、B.C.600年頃のこと。今でこそ「静電気」だなと誰もが知っていることでも、当時の人々にとっては目には見えない不思議な力に視えたことでしょう。

当時は琥珀に秘められた太陽エネルギーが、擦ることで増幅されたと考えられたそうです。これを語源として現代の"electricity 電気""electron 電子"という言葉が誕生しました。

"electricity 電気"は勿論、"electron 電子"も、現代の我々は大いに活用しているからこそ、当たり前の存在すぎて、無くてはならないものになりました。

 

そういった身近に存在するものが、遠い昔にまさか石から始まったなんて。しかも植物由来なのか、と。そう考えるとやっぱり、植物は錬金術師じゃないの? というところに戻ってきてしまいます。

こちらの本を読みましたが、挿絵も素晴らしく内容も充実していて、めちゃくちゃオススメです。この表紙をご覧になってビビッと来た人は間違いなく中身も好きなはず。

 

因みに琥珀とは別に"電気石"と呼ばれる石もありますが、これはトルマリンのことで、圧力や熱を加えると電気を帯びる性質をもった鉱物です。

その話もいつかするか……どうかはわかりませんが、この手の話は面白いなあと思っています。

 

琥珀から人は何を発想するか

琥珀という化石の不思議な魅力は、その存在の異質さや魅力的な特性の多様さに在るのではないかと考えるようになりました。

そういった視点は是非とも創作に取り入れたくなるものです。

 

小説

私も自身の小説の中で『表現するためのキーワード』『特徴づけられた存在』として用いることにしました。

SF小説を主に執筆しているので、琥珀の歴史文化化学的性質全般を上手く埋め込めたら面白いかなという視点で眺めています。

 

でも、同じ様に発想した先人はいくらでもいるはず。やはり化学的性質の中でも、色のイメージを伝えるために『琥珀』という表現を使った作品が目立ちます。

 琥珀の夢

日本で初めて国産ウイスキー造りに挑戦した鳥井信治郎氏の生涯を描いた『琥珀の夢』。

琥珀の夢 上 小説 鳥井信治郎 (集英社文庫)

琥珀の夢 上 小説 鳥井信治郎 (集英社文庫)

  • 作者:伊集院 静
  • 発売日: 2020/06/19
  • メディア: 文庫
 
 
 

鳥井信治郎氏はサントリーの創業者で、「やってみなはれ」と失敗を恐れず挑戦することが大事であるとの言葉を残した方でもあります。

琥珀の夢 下 小説 鳥井信治郎 (集英社文庫)

琥珀の夢 下 小説 鳥井信治郎 (集英社文庫)

  • 作者:伊集院 静
  • 発売日: 2020/06/19
  • メディア: 文庫
 

ウイスキーへの夢、そしてそこに懸ける情熱、そういった一言では表しきれないはずのものが様々な色味を帯び、さらには経年変化もする琥珀に込めれられているように思えます。

 

草枕

夏目漱石の『夢枕』では、急須から注がれる茶の雫を表現するのに『琥珀色』という言葉が使われています。

夢十夜・草枕 (集英社文庫)

夢十夜・草枕 (集英社文庫)

  • 作者:夏目 漱石
  • 発売日: 1992/12/15
  • メディア: 文庫
 

多くの出版社から趣向を凝らした装丁で出版されているので、コレクションしたくなるという吸引力が……まるで琥珀ですね。

草枕・二百十日 (角川文庫)
  

創作に『琥珀』名前として取り入れる方は、恐らく少なくないのではないかと。

 

琥珀糖

琥珀のツヤツヤとした透明感も魅力の表現するための注目すべき特徴です。

小説ではなく、食べ物界隈でも! 

 

こちらは見た目の麗しい『琥珀糖』という菓子。

寒天に砂糖や水飴などの甘味を加えて固めた菓子で『食べる宝石』なんて称されたりします。

江戸時代から主に夏場に食されていたらしく、川や空といった『自然』をイメージした表現もできることからも好まれています。 

レシピ本もいくつか出版されています。

 

やはり『琥珀』という存在には、様々なものを生み出す源泉のような魅力があります。

そんなことはつゆ知らず付けたペンネームでしたが、初めからそのつもりの意気込みで付けたんだと言うことにでもしておこうかな。

 

参考文献

◉飯田孝一著(2015). 『琥珀』京都,亥辰舎 

 

こちらは本当に充実していて、美しく、写真や文字が大きめでとても読みやすい。まるごと1冊琥珀の図鑑のような本(B5版

琥珀 (飯田孝一 宝石のほんシリーズvol.1)

琥珀 (飯田孝一 宝石のほんシリーズvol.1)

  • 作者:飯田 孝一
  • 発売日: 2015/10/30
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

写真提供等、『久慈琥珀博物館』の協力を得ながら制作されたようです。

  • 前半:琥珀に纏わる歴史や形成過程、性質、産地などの紹介
  • 後半:宝石としての魅力、処理、鑑別法

大人も子供も楽しめる丁度いい加減で、内容はとても充実しています。

 

また、コーパルに関する記述は他の書籍に比べ圧倒的な情報量。

著者の飯田孝一氏は『宝石の鑑別家』とのことなので、鑑別に必要な知識として、琥珀とコーパルの違いを掌握されているのだと思います。

 

実は、小説を書き始めるまでは、「琥珀……あの虫とか入ってる黄色い石? え〜っと確か植物樹脂の化石だっけ?」くらいの認識でした。でも、何か書くためにこうして調べていくと、誰よりも自分がまず楽しくなっていくものですね。