ソロキャンプデビューしたのは秋も深まる頃。小さなテントを立てて、簡単な食事を作って、太陽の浮き沈みと共に過ごしたほんのひと時。
そんなささやかな小さな一歩も、『何かを始める』ことは大きな変化に他ならない。
目下の目標であるテン泊登山や、いつか実現したいロングトレイルを視野に入れて、小さな荷物で、できるだけ快適に過ごせるよう野営を研究したい。
時期とキャンプサイト
11月中旬、関西では有名な〈笠置キャンプ場〉へ。
木津川の河川敷に水場と簡易トイレがあるだけのシンプルさながら、直火OK*、低価格、車乗り入れ可と人気の野営地である。
予約不要のため、天気予報にやきもきしなくて良いのもいい。
(*2022年4月1日から直火禁止に。残念ながら、やはりマナーでしょうか……。笠置市観光協会のサイトには『自然環境保全のため』と記載されています)
この日は電車と徒歩で向かった。
笠置キャンプ場はなんとJR笠置駅から徒歩5分の好立地なのだ。
料金(大人1人)
- デイキャンプ:500円
- 1泊2日なら1000円
当日、キャンプ場の入り口で現金払い(2019年11月時点)
キャンプ場に到着!
キャンプ場に到着して、はじめにすることって一体何だろう。
まずは自分のスペースを確保するため、とりあえずグラウンドシートを敷いた。そしてまずはテントを立てて……と思っていたものの、ここへ来るまでにすでにお腹が空いていた。
だから林檎を齧った。
一刀両断!
VICTORINOXのマルチツールは何かと役に立つ。
続いて、芋密度満点の安納芋パン!
贅沢すぎるおやつ。
さらに、むきたてのゆでたまごをハーブ塩で。
お腹も落ち着いたところで、ぷらぷらと散策した。
初めてのキャンプ場ということもあり、ついでにトイレや水場の位置を確認する。
本来なら先に確認して、便利な位置を確保すればよいのだろうけれど、すでに人が沢山いた。キャンプ日和の良い天気だったし、昼ころ到着したからだ。
少し離れた場所でも、十分に快適な場所を確保できたのはむしろラッキーだった。
テント設営
やはり車で乗り入れているグループが多く、周囲には立派なテントやタープに、コンロやテーブル、イスと快適装備が目白押しだ。
それはそれとして、ようやく自分の基地を設営する。
開放的で広々とした河川敷の空間は、初めて野外でテントを張る場所として、うってつけだった。
5分後……
完成。
ポールを二本通すだけ。
『なんやこれー!!!ほんまに寝るだけやん!』
と、通り過ぎていく人たちからの声が聞こえた。お隣さんがブラックホール級のBIGテントだったので、余計にちんまりして見えたに違いない。
シンプルながら、なにげに便利。
本当に人一人分の空間しかないツェルトテント。
タープなんて無いので、テントの影に座ることにする。イスは寝袋の下に敷く用のマット。テーブルはその辺で拾ってきた石。
これで十分だろう。
ストーンテーブルは手帳を広げるのにもぴったり!
呑気にこんなコトをしていられるのも、ソロキャンプの醍醐味だろう。
夕食の準備でも?
と思って動き出したのは15時半過ぎ。暗いと本当に活動しにくいから、できれば日が暮れる前には片付け終えていたい。
焚き火が始まったり、肉を焼いたりと、周囲からも良い匂いが漂っている。
イワシのオイルサーディンパスタ
エリンギの直火焼き
その他、スープやパンなど。
夜中にお腹空きそうなので、少し欲張っておく。
そして食べ終わったら、さっさとお片付けだ。
気温はなめらかに下がり、少し日が陰ってきたかと思えば、すぐに暗くなる。
急いでマットをテントに入れて、寝袋を準備する。そして残りの食材やゴミと一緒にテントの中へ。
秋の夜長に
持参した光源は、テントからトイレへの移動やテント周辺での小さな明かりとして最低限という程度だ。
- 電気屋のレジ前コーナーで700円で購入した簡易ライト&ランタン
- 自転車のハンドルに付けるタイプのライト
- スマートフォンのライト
だから暗くなったが最後、ジタバタせずにのんびりとテントで過ごすことにする。
夜のはじまり
さて、テント内の空間は人一人が寝転ぶスペースしかない。なんなら、もう寝るしかない。というわけで寝袋に入ると、疲れていたのか、満腹感だからか、ごく自然な流れで寝落ちした。
時刻は18時頃だった。
そして、事件は起きる。
暗闇の闖入者
とはいえ、21時頃に目が覚めた。コーヒーを飲もうかと思いつつ、しばらく寝袋にくるまってうだうだする。
暖かい寝袋の中から出る気が起きずにいると車が停まった。かなり近い。
受付は夕方で終了しており、すでに車の乗り入れは禁止の時間帯。なのに、エンジンが停止するやいなや、バンバンと車の開け閉めの音がする。どやどやと数人が出てきたらしい。
ボスッ!!!
『ふぎゃ! なんじゃ!?(心の声)』
それまで寝ぼけていたけれど、妙な音に襲撃を受けたのかと一気に覚醒する。
ビビっていると、「ペグかあ〜」「真っ暗や〜何も見えへ〜ん」「腹減った〜」と色んな声がする。そして少し離れたところへ移動してゆく気配がする。声質からすると、10代の終わりから20代のはじめくらいだろうか。
どうやら私のテントのガイライン(張り綱)が餌食になったらしい。きっと足を引っ掛けたのだろう。やれやれと一息ついて、珈琲を飲むことにする。
外に出ると、かなり寒かった。そして案の定、ガイラインが緩んでいた。
キャンプ場で他所のテントに足を引っ掛けたら、ちゃんと確認しよう。目に見えないことにこそ想像力を。と、一つ教訓を得た気持ちになった。
月夜の珈琲タイム
外に出しておいたドリップコーヒーの袋はしっかりと結露していた。お湯が湧くのにも時間がかかるだろう。
レジャーシートはすでにグラウンドシートとテントの隙間に格納済み。マットはテントの中だ。仕方ないので、大きめの石に手ぬぐいを敷いて座る。
底冷えが先か、お腹が温まるのが先か。いよいよ試練の時だ。
シェラカップの底から、ふつふつと水から追い出された空気が浮かび上がる。お湯が沸く光景を眺めていると、なんだか温かい気分になった。ついでにお隣さんの焚き火の暖色からも、温まった気分を頂戴する。
夕方に散々食べたのに小腹が減っていたからパンを少し齧る。たっぷり入ったいちじくのほのかな甘味とブラックコーヒーの苦味を寒空の下でいただく。
外で過ごすと、寒さも、味覚も際立って感じる。そのことで、ようやく生きていていることを実感できるかもしれない。
期待していた星空はない。電灯が近くの橋を煌々と照らし、それに対抗できる明かりは、月と他所様の焚き火くらいのものだった。
あまり外に長居すると冷えるので、早々に巣穴へ退避して寝袋に潜り込んだ。イヤホンを装着し、オーディオブックを起動してスリープタイマーかける。
では、おやすみなさい。
一夜明けて
いつもどおりの熟睡の後、目が覚めたのは5時半くらい。またも小腹の空きを感じつつも、寒くて寝袋から出る気にならない。そうして暫く過ごすうちに、干し芋の存在を思い出す。
そして……寝袋に入ったまま手を伸ばして、寝転んだまま口に放り込む。
当然この光景を自分で見ることはできない。けれど、近頃見たばかりの半寝のままエサをむさぼるハムスターの動画を思い出す。
今ならわかる。その気持ち。
太陽の光
ようやく意を決してトイレへ向かう。戻ったらまた寝袋に入ろうかと思っていたのに、外に出て歩いていると、上り始めた日の光が温かい。
気温はまだ低いけれど、太陽の光があると意欲が湧いてくるから不思議だ。体内時計(サーカディアンリズム)がリセットされて元気になったのか、狭いテントに戻る気は完全に失せた。
それより太陽の下で、朝ごはんだ!
朝食の準備は珈琲をお共に
珈琲でお腹を温めつつ、ソーセージが茹でる上がるまでの間、ミニトマトやゆで卵にパンを食べて待つ。楽しみにしていたチーズ入りソーセージのパッケージのシールを剥がして測量野帳に貼ると、これも思い出の一つになる。
スープが染みたパンで、さらにお腹が温まる。
そうして一日が始まるだけで幸せだ。
食べ終わったら片付けて、あとはまたのんびりと過ごす。結露したテントを乾かしながら、昨日と同じく、手帳を書いたり、川沿いを散歩をしたりするのだ。
キャンプと言えど、いつもと同じように過ごすのがいい。
おやつ
寒い時期のキャンプの良いところは、チョコレートをおやつにできることだ。
少し前までオレンジ入りのチョコレートはあまり好きじゃなかったけれど、今は好物だ。食わず嫌いだったのか、何がキッカケで気づいたのかは、もう忘れてしまった。
あたらしく美味しさに気づくと、ひとつ大人になれた気がするものだ。
木のぬくもり
そういえば、外で過ごすと『木のぬくもり』というものをより強烈に感じる気がする。
四国の剣山に登った時に手に入れた木彫りスプーン。ランタンの絵柄が焼き入れてあるのが気に入っている。
家の中で使うのも良いけれど、外で使うと不思議とより柔らかく感じた。
撤収
楽しい時間はあっという間。
特に何もしていないけれど、『何もしない』を目的に『何もない場所』へ行くのもいいものだ。朝早くからスッキリと晴れていたおかげで、早々にテントが乾いてくれた。
ここへ来たときと同じくグラウンドシート一枚を残して、最後に簡単な昼食を取り、昼過ぎには撤収した。
滝のような紅葉を眺めつつ、電車の車窓から笠置の地に別れを告げる。
また来よう。季節は巡るのだから。
今週のお題「キャンプ」