米粒遊歩 〜自由と孤独と本と手帳〜

旅のあれこれを手帳に書き残すように。

人ひとり分の空間 -CAMPチェア考察-

建築を学ぶ者は、まず『椅子』から始めるらしい。

それは暮らしの中にある〈人が一人、収まる最小空間〉だからだ。

三次元的な空間把握と構造力学を研究するにあたって、観察し、イメージを膨らませ、設計して作ってみる。そして座ってみてフィードバックするまで、椅子ほど身近で、体感的に理解できるものはないのだろう

 

何を唐突に?と思うかもしれないが、久しぶりにこじんまりとソロキャンプをしたことで、非常に奥が深い椅子への興味が沸々と再燃したのだ。

(以前投稿した『ミュージアムに佇む椅子』の記事は、追って改稿・再掲予定)

 

ソロキャンプの空間

ソロキャンプをする目的は、純粋に外で気ままに過ごしたいから。

でもそれだけではなく、ロングトレイルを辿ることも目指しているから、野営しながら長期の『歩き旅』をすることも視野に入れておきたい。そうなると、『充分な休息』と『軽快な足取り』のちょうどいいとこを狙った荷物を背負うことになるだろう。

 

ロングトレイルの旅は別に一人でなくてもいい。

(ちょっと不安でもあるから、道連れが居てほしい気もする)

でも、その予行演習というか、どうすれば快適か自分にとっての必要十分はどこにあるか、といったことを、ゆったり試行錯誤するための時間は、一人で過ごすに限る。

 

テントサイト

ようやく2回目の出動となったテントは、UL志向の頂点とも言えそうなHERITAGEのクロスオーバードーム

自立式・シングルウォールツェルトテントだ。

本格的な登山での使用というよりも、ロングトレイルを視野に入れて、軽量かつコンパクトさを最重要視して選んだ。

(過去記事『自分サイズのソロテント』は追って邂逅・再掲予定)

 

このテントを中心に、野営基地を作ることになる。

 

椅子は必要か

はじめてのソロキャンプは、徒歩&電車でのアクセスだったので、徹底して荷物を減らすことにした。だから腰を下ろす先は、寝袋の下に敷くためマットだったり、百円で手に入れた折りたたみの簡易座布団だったり。

少しでも底冷えを緩和するために、手拭いを敷いて座った大きめの石(近くで拾ってきたもの)が、にわかに『椅子』と呼べたかもしれないが、基本的には椅子無しスタイルでの野営だった。

 

時を経て、この連休中に2回目のソロキャンプを決行した。

今回の移動手段は車。

公共交通に乏しいエリアを移動しながら拠点を変えつつ、台風の行方と天候の様子見をしながらの計画であったためだ。しかも唐突な思いつきで飛び出したため、あれこれ考えて荷物を削るような準備はできなかった。

 

それでも時折雨が降る中、3泊のキャンプ生活を快適に過ごせたのは、ちょっとした時に気兼ねなく腰掛けられる場所があったからだろう。

 

とにかくさっと食事して寝るだけならば、椅子の分の重量とスペースは荷物から除外したい。でも、今回のようにのんびりと時間をかけて料理を作ったり、寛いだりするなら、椅子はあった方が断然快適だ。

 

椅子に関する考察

現時点で思い至ったのは、『椅子』に関しては、ロングトレイルや登山と、野営地でゆったり過ごすキャンプとでは、一旦切り離して考えようということだった。

過ごし方が違うなら、必要なものも違うはずだ

とはいえ、電車などの公共交通を利用した徒歩キャンプもするだろうから、座り心地をはじめとした快適性はもちろん、持ち運びが苦にならない椅子を選びたい。

 

試しに椅子を置いてみた

今回は実家の物置に眠っていた椅子を持ち出した。

恐らく庭でBBQをするためか、大昔にホームセンターで購入したものだ。

テーブルと椅子のみのソロのテントサイト

ついでに折り畳みの小さなテーブルも持っていった。

 

見ておわかりのように、テーブルの天板が椅子の座面よりも、かなり低い位置にある。

まあ、あるものを持っていっただけなので仕方ないけれど、前傾姿勢で作業することが多くなり、思っている以上に身体に負担がかかる

 

後半戦で移動した先のキャンプ場では、手頃な石がいくつも手に入る状況だったので、『風防』兼『作業台』のつもりで石を積んだ。

石を積んで作った風防兼テーブル

雨が降ったり止んだりだったので、即座に車内に撤収できるよう、外に出すものを最小限にしたからでもある。

ご覧の通り、更に低い位置にモノがあるので、変なところが筋肉痛になりそうだ。

もっと近くに、できれば地べたに座りたい、という気持ちになった。

 

これははじめてのソロキャンプでも感じたことだった。

作業する対象との高さの関係だけでなく、自分の基地から周囲を見渡したときの眺めも、純粋に低い位置からの視線がいい。これは好みの問題だろう。

野営地からみた景色

そう。わたしは地面と限りなく近いロー・スタイルが好きなのだ。

 

地面と友だちになれる理想の椅子探し

ソロキャンプを始める前から、椅子のことは何度も考えた。

まず頭に過ぎったのは、定番中の定番、HELINOXのシリーズだ。

仕様比較をしたりもした。

HELINOXチェアのタイプ別仕様比較

重量と収納サイズのみで考えるなら、大人も座れる子ども用の『チェア ワン ミニ』。そこに快適性も加えると、チェアワンより少し小さめの『チェア ゼロ』か、と考えていた。

が、2度のソロキャンプで確信したのは、自分に合うのは間違いなくグラウンドチェアであるということだ。

とはいえ、HELINOXに拘らずとも、価格を抑えた類似品も多い。

2度目のソロキャンプから帰還してまずしたことは、実は椅子探しだった。

 

心に決めた一脚

結論から言うと、『あぐらで使える』がキャッチコピーのOUTBEARのローチェアに決めた。

 

背もたれのない腰掛けタイプのmont-bell トレールチェアなども考えたが、作業の合間に一息つく時、食事はもちろん、おやつを用意して1杯の珈琲を楽しむひと時、そんな時間に、疲れた身体をそっと受け止めてくれる背もたれの優しさを感じずにはいられなかった。

ゆったりするための椅子を手に入れるのだから、背もたれは必須と考えた。

 

    • 重量:本体760g+収納ポーチで、トータル850g
    • 耐荷重:120kg
    • 収納サイズ:40*10*14cm

フレームには航空機などでも使用される超軽量素材の『超々ジュラルミン』が使用されているにも関わらず、テントの方が軽いことに驚きを隠せない。

座面で受ける人の重みを、フレームで分散しつつ支える必要があるので、当然と言えばそうかもしれないけれど……。

 

とはいえ、イスだって持ち運ぶ時代なのだ。

椅子が収納されたポーチ

このポーチに収納した状態なら、バックパックの外側に括り付けることもできそうだ。徒歩&電車のキャンプでも持っていけるかもしれない。

 

似たような商品が沢山ある中で、このOUTBEARのローチェアを選んだ理由は、メーカーのロゴが可愛くて好みだったことと、脚の形状である。

その話は、また今度にしようかな。

 

早速組み立てて座ってみる。所要時間は1分ほど。

部屋に設置してみたローチェア

思っていたよりも座面が広くゆったりしていて快適だ。安定感があって、角度も丁度いい。読書したり、軽く昼寝もできそうだ。

 

次にキャンプへ赴くのを待たずとも、早速部屋の中で大活躍してくれている。